湘南ベルマーレの試み フードパークと社会連携

湘南ベルマーレフードパーク

湘南ベルマーレはこれまで多岐にわたるホームタウン活動を続けてきた。

今年は活動の枠をさらに広げ、地域の課題に向き合っていくという。

湘南ベルマーレの風村ひかるさんが取り組む、フードパークと社会連携の試みを紹介する。


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基準をつくれた昨年のフードパーク

――風村さんはベルマーレフードパークを長く担当されているそうですね。

「はい。今年で7年目です」

――昨年のフードパークを振り返って印象深い出来事を教えていただけますか。

「ホーム最終戦の徳島戦(11月27日)はチケットの売れ行きが良くて、天気予報も良くて、試合前日までに注文できるオンラインオーダーの売上がシーズン1でした」

――そうだったんですね。

「皆さん気合が入っているのかなと感じてすごく印象深かったです。何かをしたいという気持ちが高まっていたんだと思います」

――昨年は一時期、悪天候に悩まされました。

「そうですね。昨シーズンはフードパークを実質3回中止にしていまして」

――そうでしたか。

「過去には試合自体が中止になって、やむを得ず当日の朝に店舗さんに連絡したことはありました。でも昨シーズンは、搬入時間の天気予報がものすごいけど試合が始まればたぶん大丈夫、みたいな日が多くてすごく大変で。そのおかげで慣れたというか一つ基準をつくれた年になりました」

――こういう予報ならこうする、という基準ですね。

「はい。オペレーションがある程度固まってきました。あと印象深いことといえば、スタジアムに出している広告の幕が雨に濡れて、試合翌日にスタジアムに集まってみんなで乾かしたことですね。私はベルマーレに丸5年在籍していますが、昨年は過去4年分ぐらい幕を乾かしたシーズンでした。今年はそうならなければいいなと思います(笑)」

割引が魅力的なオンラインオーダー

――オンラインオーダーの手応えについてはどのように感じていますか?

「コロナ禍でソーシャルディスタンスを保つためにオンラインオーダーを急いで準備しました。至らないところもありながら、昨年はやっと1年通して同じシステムを皆さんにご利用いただきました。本来は2019年に試合日の混雑をどうにかしたくてオンラインオーダーを導入する準備を進めていたので、真価が発揮されるのはこれからなのかなと思っています。いろいろとご迷惑をお掛けするかもしれないですけど、ぜひ引き続きたくさんの方に使っていただきたいです」

――どれくらい浸透してきましたか?

「利用率は全体売上の13%ぐらいで推移しているので、思ったよりは普及したかなという感じはしますね。この率がさらに上がれば効率も良くなって店舗さんの売上も上がるはずなので、もっと普及できればなと思っています。試合前日までにオンラインオーダーで注文しておけば、当日お客さんが長い列をつくっていても、ファストパスみたいにそれほど並ばずに受け取ることができて便利です。混んでいるときほど使ってよかったなと感じていただけると思います」

――今年こそ使ってみます。いつも列に並んでいるので。

「ほんとですか? 一部のメニューを除いてほとんどのメニューが注文できますし、開門時間より前の受け取りにすると10パーセントオフになるので、ぜひ」

――割引があるんですよね。

「そうなんです。以前のように自由席が多かった頃は、皆さん開門時間よりもだいぶ早くスタジアムに来られていました。というのも、開門30分前に自由席の列整理をしていたので、試合の3時間前ぐらいから待機していた人が多かったんです。でも、指定席化が進んでぎりぎりに来る方が増えたので、開門前の時間帯にぜひ来ていただきたくて10パーセントオフの割引をご用意しました。いつもフードパークの長い列に並んでいた人たちが開門前に受け取ってくれたら、オンラインオーダーやフードパークを知らずに来た人たちが開門後でも購入しやすくなります。今よりもっとたくさんの人たちがフードパークを楽しめるようになると思います」

――当日に並ぶ必要がなくなれば時間を有意義に使えそうですね。

「そうなんです。総合公園は動物園もあればプールもあれば遊び場もある素晴らしい場所なので、スタジアムで丸一日楽しんでいただきたいですね」

FC東京ホームゲームでもフードパークを運営

――昨年9月にはFC東京がレモンガススタジアム平塚でホームゲームを開催しました。風村さんはあの試合のフードパーク運営に関わっていたのでしょうか?

「はい。FC東京さんから全部委託していただきました。店舗さんも普段担当している人がいれば気が楽でしょうし、私も気が楽だったので、もし委託していただけるのであれば全部やりますとお伝えしました。最近はあまりイベントがなくて店舗さんが出店場所を探している状況なので、出店できる場所をつくってあげたいなとも思っていたんです。店舗さんもFC東京サポーターの皆さんもみんながハッピーになるかなと思って提案させていただきました」

――ベルマーレの試合でもおなじみの店舗さんが出店していましたね。

「はい。全店舗そうですね」

――全店舗だったんですね。ベルマーレのサポーターも楽しめたでしょうね。

「そうですね。フードパークは試合に付随したイベントですけど、試合を見ない人にもピクニックがてら来てほしいなといつも思っていたので、その第一歩になりました」

2022年にテスト導入したいこと

――今年のフードパークで新たな計画があれば教えていただけますか。

「ずっとプラスチック容器の問題は気にしていて、ゴミを拾う前に減らすことも大事だと思っています。プラスチック容器を紙の容器に切り替えるとか、パルプや端材を再利用したものにするとか、せめてバイオマスを利用したプラスチックにするとか、いろいろ選択肢があります。リユース食器を使ってくださいと発信しているイベントもあると聞くので、決して不可能ではないのかなと。今年は模索しながら何試合かテスト導入したいですね」

――そういえば風村さんは以前ドイツに留学されていたんですよね。確かドイツはリサイクルに熱心な国だったかと。

「そうですね。ペットボトルや瓶は必ずではないですけどデポジット制です。ペットボトルをお店に返せば30円ぐらい戻ってきますし、瓶は20円ぐらい戻ってきます。みんな使い終わったペットボトルや瓶をお店に返して、戻ってきたお金でまた買い物をしていますね。食材や製品を選ぶときにSDGs(エスディージーズ/Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)に沿って生産されているかどうかも判断基準になっています。日本に帰国して6年くらいたちますけど、SDGsが急速に推進されてきて、海外の基準に向かいつつあるのかなと感じています」

強みを生かした社会貢献

――風村さんはフードパークだけでなく社会連携も担当されているそうですね。

「はい。私はどちらかというと実動部隊というよりは情報のハブ役だと思っています。小学校体育巡回授業はスクールのコーチが担当していますし、LTOのゴミ拾い活動も担当者がいます。ベルマーレはそのほかにもCOPA BELLMAREやフードバンク活動にも取り組んでいます。多くの方に社会課題を解決する活動にご参加いただけるように、クラブから情報を発信していきたいです」

▼社会連携の活動事例

小学校体育巡回授業
・協働者:各自治体、学校、パートナー
・対象:ホームタウンの小学生、幼稚園生、保育園生
・目的:体を動かすたのしさを伝える

COPA BELLMARE
・協働者:ホームタウンサッカー協会、スポンサー
・対象:ホームタウンを中心とした11歳以下の子ども
・目的:サッカーを通した国際交流、世界レベルの体感

LTOゴミ拾い活動
・協働者:NPO法人海さくら、日本財団、一般市民(ホームゲーム来場者)
・対象:一般市民
・目的:ビーチクリーン活動、海洋汚染問題の啓発

フードバンク活動
・協働者:フードバンク湘南、地域の大学の学生、一般市民(ホームゲーム来場者)
・対象:一般市民(要支援者)
・目的:食料寄付の募集

――今後はWebサイトに事例を掲載していくそうですね。

「はい。社内の各部署とも情報を共有し合って体系的に残しておけば、新しいことを始めるときに活動を促進できると思います。あとは対外的な面ですね。一緒に取り組む仲間を集めるにあたって、SDGsという言葉が分かりやすいのであれば、今までの活動もこれからの活動もSDGsに当てはめて発信していくのがいいのかなと思っています」

――それでは最後に今年の抱負をお願いします。

「2020年と2021年はコロナ禍で『やりたいことをやる』というより、『できる範囲でやっていく』年でした。今年はオンラインオーダーをさらに飛躍させて、リユース食器を試して、2017年に追加されたホームタウンの方々とも十分に向き合いたいです。できる範囲で落ち着くのではなく、いろんな方を巻き込んで、ベルマーレの選手たちのようにチャレンジする年にしたいですね」

風村ひかる(かざむらひかる) 株式会社湘南ベルマーレ 社会連携部部長 兼toC事業部 飲食担当マネージャー

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文=大西 徹(SHONAN BOOK)